作品2000
ペネロープ
Pénélope
『ペネロープ』 は、ガブリエル・フォーレによる全3幕のオペラで、1913年 3月4日にモンテ・カルロのモンテカルロ歌劇場にて初演された。フランス語のリブレットはルネ・フォショワによって書かれている。フォーレは本作を音楽詩劇 と銘打っている。本作はサン=サーンスに献呈されている。
作品2000
Pénélope
『ペネロープ』 は、ガブリエル・フォーレによる全3幕のオペラで、1913年 3月4日にモンテ・カルロのモンテカルロ歌劇場にて初演された。フランス語のリブレットはルネ・フォショワによって書かれている。フォーレは本作を音楽詩劇 と銘打っている。本作はサン=サーンスに献呈されている。
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この項目から調査する『ペネロープ』 は、ガブリエル・フォーレによる全3幕のオペラで、1913年 3月4日にモンテ・カルロのモンテカルロ歌劇場にて初演された。フランス語のリブレットはルネ・フォショワによって書かれている。フォーレは本作を音楽詩劇 と銘打っている。本作はサン=サーンスに献呈されている。
『ペネロープ』(フランス語: Pénélope)は、ガブリエル・フォーレによる全3幕のオペラで、1913年3月4日にモンテ・カルロのモンテカルロ歌劇場にて初演された。フランス語のリブレットはルネ・フォショワによって書かれている。フォーレは本作を音楽詩劇(Poème lyrique )と銘打っている。本作はサン=サーンスに献呈されている。
フォーレはソプラノ歌手のリュシエンヌ・プレヴァルから、若い台本作家ルネ・フォショワを紹介される。フォーレはフォショワの ホメーロスの『オデュッセイア』を基にした台本を気に入りオペラとして作曲することにした。フォーレは1907年4月から作曲にとりかかり、1912年8月31日にようやくルガーノで完成した。しかし当時のフォーレはパリ音楽院院長としての任務が多忙であったため、作曲に費やせるのはほぼ夏休みの期間に限られたことなどから、オーケストレーションをフェルナン・ペクーという若手音楽家に委託した。しかし、フォーレ自身が3分の2以上の部分をオーケストレーションしていることと、ペクーの仕事もフォーレ自身が丹念に見直していることは確かである。
フォーレの劇場向けの音楽としては、1885年に『マゼッパ』の作曲を思い立ち、途中で放棄した経緯がある。また、純粋なオペラではないが、1899年から1900年にかけて抒情悲劇『プロメテ』を作曲している。これはベジエのための大掛かりな野外劇のための作品(オーケストラに3つの軍楽隊も加わる)で、1900年8月に初演された。
モンテカルロ歌劇場での初演は3日間の上演であり、やっつけ仕事となってしまったため、フォーレにとっては、あまり満足のいくものではなかった。それでも、『モナコ新聞』では「リュシエンヌ・プレヴァルはペネロープを感動的な人物として描くために全力を尽くした」と報じられている。パリ初演は数年前から予告されており、パリ音楽院長フォーレによる初めての舞台作品ということで、上演が待ち焦がれられていた。開館したばかりのシャンゼリゼ劇場での支配人ガブリエル・アストリュクによる上演は成功であった。歌手はプレヴァル以外は全員入れ替えとなり、指揮はルイ・アッセルマンスであった。また、デュレックの演出はナビ派の画家ケル・グザヴィエ・ルーセルの感動的な舞台装置を背景にして展開され、ユリスを歌ったリュシアン・ミュラトールは高く評価された。パリ初演は大成功を収め、「傑作」という言葉が多くの批評欄に見られた。しかし、これほどの輝かしいデビューを飾ったにもかかわらず、本作はその後、その価値に見合った運命をたどってはいない。
その後、パリでは1919年にオペラ・コミック座にて再演され、1943年にはオペラ座でも同じくジェルメーヌ・リュバンの主演により上演された。
近年の注目すべき上演としては、2005年にウェックスフォード・オペラ・フェスティバルにてジャン=リュック・タンゴーの指揮、ルノー・ドゥセの演出による上演、2015年10月にラン歌劇場にてパトリック・ダヴァンの指揮、オリヴィエ・ピィの演出、アンナ・カテリーナ・アントナッチが主役のペネロープを務めた上演があるがある。
日本初演は、1995年9月21日に日本フォーレ協会によって都市センターホールにおいてフォーレ生誕150年記念事業として、直井研二の演出、小鍛冶邦隆の指揮で行われた。
フォーレは、このオペラの形式には音楽と劇の連続性を重視した楽劇タイプを採用した。そして、主要な登場人物やいくつかの大事な感情や観念を個々に表す示導動機(ライトモティーフ)によるワーグナー風の手法を採用した。一方、声楽の様式については柔軟に対応していくという大原則を自然に採用することになった。ここでの様式は純粋な叙唱からアリアに至るまでのすべてのタイプのある種の総合を目指そうとするものであり、フィレンツェのオペラの黎明期にも回帰しようとするものである。
『新グローヴ オペラ事典』では「フォーレは入念に構成した音楽の中に極めて質の高いライトモティーフを用いているが、ワーグナーの影響は静かな感情の高まりの部分に顕著で、クライマックスの簡素で鋭利なテクスチャーはワーグナーとは全く異質である。-中略-『ペネロープ』の簡素な様式は同じ時期のピアノ曲(例えば〈9つの前奏曲〉作品103)などとの関連が見られる。声楽の独唱パッセージの多くは、フランス・オペラ風のレシタティフ、アリオーソよりもフォーレ後期の歌曲に近いが、それらはドラマの目的に相応しい旋律的な曲線を描く歌曲(メロディ)なのである。-中略-ペネロープの性格は誇り高く、貞節で、情熱的だが、求婚者たちには情け容赦ない並外れた存在感を持つ女性として毅然と描かれている」と分析している。
フランソワ・ポルシルは「フォーレは本作でもギリシアの純粋さという自分の理想に忠実に従うが、同時にホメーロスの英雄たちを型にはまった画家たちが大好きな〈装飾的〉ぼろ衣装から解放しようとする。この点では、非順応主義の脚本家ルネ・フォショワが一役買った。彼の『素晴らしき放浪者』はジャン・ルノワールやミシェル・シモンらによって不朽の名作となるが、そのフォショワの影響もあってフォーレはほとんど日常性にも近い単純さを示す。オリュンポスの雲や管弦楽効果の代わりに、感動的で柔らかい軽やかな歌がフランス語が持つ音楽的抑揚の聡明さと相まって現れ、ラヴェルを驚嘆させた」と説明している。
ヴュエルモースは、本作の主要なエピソードは「非常に知的でまた身に滲むような感受性をもって音楽に移し変えられており、そのことはフォーレの天才の非常な新しさと、そして非常に魅力ある幾つかの様相を明らかにしている。そして、特に3つの幕における彼の語法のいつものような慎重さと優雅さの中に、さらに一層胸の張り裂けるような感動をもたらす力の偉大さが隠されているということは-それらの抗し難い音楽的な魅力を別としても-劇場のすべての神聖な伝統を捨てることによって逆説的に獲得された、劇音楽の勝利を表すものに他ならない」と力説している。
ジャン=ミシェル・ネクトゥー は「フォーレはワーグナー以後の近代歌劇を確実に進展させるような事態を引き起こしたのである。実際『ペネロープ』の中には、第2幕の大掛かりな二重唱についてみてもわかるように、アリアやアンサンブルは確かに無い。古典的な愛の二重唱を考えるべきではなく考えるべきではなく、台本と演劇的な要素に反して、ここでは全く近代的な着想による対話が重要なのである。『ペネロープ』はドビュッシーが『ペレアスとメリザンド』で用いたのと同じようなレチタティーヴォに基づいて生み出されてはいない。作品中に見られる短いが豊かな旋律性の中にこそ、彼の全くの創造性がうかがえるのであり、そこには良きフランス歌曲の創造者としてのフォーレ像が浮かび上がってくるのだ」と評している。
『オペラ史』を著したD・J・グラウトは本作について「作曲者の繊細な和声的スタイルの美しい例で、古典的題材に、落ち着いた浮世離れのした雰囲気を与え、普通の表現では到底及ばない遥か古代の感じを出している。しかし、劇場向きの効果という点から言えば、『ペネロープ』はあまりに洗練され過ぎている。筋の運びの緩やかなテンポ(特に第1、2幕)は、古代の塑像を思い浮かばせ、そこが音楽的に見て最も美しい点ではあるが、同時にこのオペラの劇的な見地から見た最大の弱点にもなっている」と評している。
『新グローヴ オペラ事典』では「この時代のもうひとつの良く知られたオペラであるデュカスの『アリアーヌと青ひげ』と同様、『ペネロープ』も音楽家の間では高い評価を受けたが、レパートリーには残らなかった。見た目に地味で華やかさに欠け、題材も悲恋ではなく、苦難を乗り越えて添い遂げられる結婚を扱い、内面の緊迫した感情を覆い隠す簡素で飾り気のない音楽様式で作曲された本作はオペラの一般聴衆におもねろうとはしなかったのである」と評価している。
ノルベール・デュフルクは、本作はフランス歌劇の傑作の一つだが「第1幕の女主人公の登場の場面や同じ幕の最後の愛と優しさから顔形を変え、ぼろを着てやって来るユリスの登場ほど心に深く食い込んで来るものはない。第2幕の〈たかまり〉(ウメ)や羊飼いたちへのユリスの情熱的な呼びかけほど感動的なものはなく、讃えるべき忠実さに巧みさと力とが敬意を表するスペクタクル風な第3幕ほど、劇的で晴朗なものはないのである。ユリスの主題の簡潔な完成や愛の主題のしなやかなメリスマをどうして思い起こさずにいられよう。声に対する過度な要求は全く見られず、イタリア人が言ったような意味での〈アリア〉はほとんどない。清澄でとらえ難く、衒学的なところのない対位法によっていつも導かれる柔軟なレシタティフがもっぱら用いられている」と評している。
ネクトゥーによれば、本作は素晴らしく統一された構想を持つ作品で、その簡潔さは彼の力量不足によるものではなく、断固たる方向性を持った彼の美意識に由来するものだからである。フォーレの『ペネロープ』はこうして、リュリに始まり、ラモー、グルック、ベルリオーズ(『トロイアの人々』)へと引き継がれていったフランス悲歌劇の最後として姿を現したのである。全体的審美観、朗唱法、管弦楽法、それ自体はある種の古典主義的な範疇に属しているとしても、その形式やとりわけ和声面は言うまでもなく当時の先端を行くものに他ならなかったのである。
前奏曲:約8分、第1幕:約50分、第2幕:約30分、第3幕:約35分、合計:約2時間5分
イタケ島のユリス王の宮殿
イタケ王ユリスはトロイア遠征に参戦したまま10年以上も還らない。ユリスの宮殿ではペネロープの居室の前の庭で、侍女たちが手際よく糸紡ぎをしながら、王を待ち続ける王妃ペネロープについて噂している。内声の細かな運動で、糸車の動きが描写されている。彼女たちは「侍女に生まれるなんて、酷い運命」(Qu'un destin cruel fit naître servantes)、「美しさは私たちの体を隠れ蓑にしている」(La beauté qui prit nos corps pour asiles)、「そして、鏡だけが私たちの美しさを知っている」(Et, seul, le miroir qui, seul, nous sait belles)などと歌い、官能的で物憂げな雰囲気を醸し出している。ペネロープはユリスが必ず彼女のもとに帰還すると確信しているものの、ユリスの父のために経帷子(死に装束)を織り上げたあかつきには、大勢の熱心な求婚者たちから結婚相手を選ぶよう迫られている。侍女たちは求婚者たちの品定めさえ始める始末。女たちの夢想が消え、「紡ぎ車は重い」(Les fuseaux sont lourds!)と歌うと、酩酊した男たちの哄笑が舞台裏から聞こえ、アンティノユス、ウリマク、レオデス、クテジップそしてピザンドルという求婚者たちが現れる。彼らはペネロープの財産目当てで宮廷に通い、我こそはと凌ぎを削っていたのだった。求婚者たちがペネロープに近づこうとすると、侍女たちはそれを阻止しようとする。そこに、年老いた乳母ウリクレが騒ぎを鎮めようと姿を現し、男たちを叱責する。求婚者たちの動機が管弦楽で幾重にも積み重ねられ、彼らが強引にペネロープの部屋に押し入ろうとすると、オーケストラでペネロープの主題が奏され、これが高揚し頂点でペネロープが現れる。ペネロープも求婚者の執拗な態度に嫌気がさし「ユリス王は帰還する、私はそれを確信している」(Il reviendra....j'en suis certaine...)、「私の耳には彼の優しい声が聞こえる」(Mon oreille entendra sa voix, sa chère voix)と気丈に振る舞う。ユリスの動機がますます喜ばしい音調に高められるにつれ、ペネロープの苦悩の動機が影を潜めていく。すると、求婚者の一人ウリマックが「あなたの希望は馬鹿げていて、あなたの願いは理不尽だ」(Ton espoir est stupide et ton voeu sans raison,)と言う。求婚者たちはペネロープにこれまで彼らを拒んできた理由を思い出させる。それはユリスの父の経帷子の織り上がらせるためであった。織物の進捗があまりにも遅いことが求婚者たちに咎められる。この場面で〈織物の主題〉は艶やかな絹を重ねたような弦楽器の響きの中に嬰ヘ音のペダル音上で大規模な和音を響かせてゆくが、それは穏やかで神秘的で、そして、実に印象的な一瞬を現出させている。ウリマックは庭を通りかかった笛吹たちに合図をし、踊りが始められる。求婚者たちは、ペネロープを取り囲み、口々に彼女を賛美し、妻にする夢を歌う。ペネロープは彼らの話には上の空で、ユリスの動機が奏されると、立ち上がって「私の誇り高き夫よ、来て、追い詰められた苦しみから救って!」(Ulysse! Fier époux! ... Viens! ... Secours ma détresse!)と〈愛の主題〉とともに高らかに叫ぶのだった。
その時宮廷の外から、ユリスの声が聞こえてくる。一同が訝る中、見知らぬ男(乞食に身をやつしたユリス)が現れ、「私は哀れな旅人です」(Je suis un pauvre de passage)と物乞いをする。男たちは物乞いを追い返そうとするが、ペネロープはその物乞いに憐れみを抱き、慈悲深くも宮廷に招き入れ、ここに泊まることを許す。やがて、夕食の支度が整うと求婚者たちはペネロープに同席するように言うが、彼女はこれを拒否
出典: ペネロープ (オペラ) (CC BY-SA)
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